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- 『21世紀・日本再生論』(2015・12)-32 消費税を、「年金・医療税」に!
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- 『21世紀・日本再生論』(2015・12)-28 日本経済の構造は激変した‐Ⅲ
- 『21世紀・日本再生論』(2015・12)-27 日本経済の構造は激変した‐Ⅱ
- 『21世紀・日本再生論』(2015・12)-26 日本経済の構造は激変した
- 『21世紀・日本再生論』(2015・12)-25 人口減少社会という新しい時代の中Ⅱ
- 『21世紀・日本再生論』(2015・12)-24 人口減少社会という新しい時代の中で
- 『21世紀・日本再生論』(2015・12)-23 地域主権型道州制」の実現は、大阪から
『21世紀・日本再生論』(2015・12)-24 人口減少社会という新しい時代の中で
『21世紀・日本再生論』(2015・12)-24
「人口減少社会」という新しい時代の中で!
ピンチをチャンスに!
―チャンスはピンチの顔をしてやってくる・世界のモデル国家・日本を目指して―
人口減少は、2008年から現実のものとなりました。内閣府の将来推計によれば、34年後の2048年には人口1億人を下回り、46年後の2060年には8764万人に減少すると言われています。つまり、2050年ごろには、日本の人口は1億人と予想されています。現在に比べると、2050年までに22%(2800万人)の減少、2060年までには31%(4000万人)の減少です。このことが、多くの国民の皆様に強い悲観論・将来不安をもたらしています。しかし、私は、将来を悲観することなく、これからの30年間を、我が国が「世界の中の日本」としての存在感を確立する好機ととらえていきたいと思っています。高齢社会は、どんな国であれ成熟した国家が必ず向かう道であり、日本は世界の中で高齢社会への道の先頭を走っています。ということは、日本のみが停滞に向かっているわけではありません。それゆえ、「成熟社会の中で、いかに活力を蘇えらせるか」は今後30年の日本最大のテーマであり、大きなチャレンジです。
しかし、日本は、歴史が始まって以来一貫して人口が増加してきた国です。一時的には、大きな天災や戦乱などで人口が減ったことはありますが、それが落ち着くとすぐに元に戻り、長期トレンドは変わることはありませんでした。特に近代化が始まった明治以降、そして戦後においても、加速度的に人口が増加したのです。数字で見てみると、明治の初めには約3500万人であった人口が、終戦時には約7000万人になり、2008年のピーク時には1億2800万人です。明治以降の150年間で約4倍に、昭和の初めからでも約2倍になっています。(人口増加グラフ)
つまり、中長期的な人口減少は、私たちにとって初めての経験です。それゆえに大きな不安と危機感を抱くのも当たり前だと思います。どんな人でも、日々の暮らしの中でも、初めての試みや経験には大なり小なり不安を抱くものです。それが、集団ともなれば集団心理で大きな不安になるのです。「日本の将来は暗い」と考えてしまうのです。しかし、個人でも、必ず失敗は経験します。必ずピンチに陥ることはあります。その時に、嘆き悲しみ、悲観してばかりでは何も変わりません。厳しい現実の中でも、前向きに考えプラス思考で進んで行けば、必ず道は開けるのです。そして、後で振り返れば、その時の苦労があって今がある。と思えるのです。「ピンチはチャンス」なのです。
日本は高齢社会のトップランナー
高齢社会・人口減少の到来は、ひとり日本だけの現象ではありません。世界の人口はまだまだ増加しており、一方で日本の人口は減少している。という事実で、なんとなく高齢化・人口減少は、日本に特有の現象だとイメージ的に錯覚してしまうのではないでしょうか。実はそうではありません。今後人口が増加していく国は、ほぼ発展途上の地域に限られています。主に、アフリカ・アジアといった地域に集中しています。一般的に豊かな国と言われている世界の主だった国々は、多くが大なり小なり成熟化の流れの中で高齢社会へと向かっています。日本は、その大きな世界の流れの先頭を走っているのです。トップランナーだということです。
これまで、日本は世界の中で大きな流れの先頭を走った経験を持っていません。常に先を走っている国々の背中を見て走ってきました。目指すべき姿の見本が常に存在したのです。今、その見本とする先行ランナーがいないのです。初めて前に走者がいない先頭を走ることになったのです。それゆえ、高齢社会・人口減少は、日本特有のことだと錯覚し、大きな不安を感じているのです。欧州諸国のみならず中国、韓国、ロシアといった新興国も例外ではありません。特に、出生率1という一人っ子政策を過去数十年採用してきた中国は、今後遠からず膨大な人口を抱えた高齢社会に突入し、人口増加はストップします。日本の10倍の人口を有する中国の今後を考えると、どういった対応策があるのか、想像も難しいと感じられます。そして、いよいよ一人っ子政策をやめる決定が最近なされました。
そんな世界的な流れの中で、日本が「活力ある高齢社会」を、今後30年間で創り上げることができれば、日本は世界の「モデル国家」たりえるのではないでしょうか。
一昨年秋、情報通信分野のミーティングを大学関係者とするために東欧を訪れました。ポーランド、ハンガリー、ドイツ(旧東ドイツ)の六つの大学でミーティングを行いました。その時の感想です。特にポーランドは、東欧の中でもヨーロッパの新興国(V4とよばれているポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア)の中心として大きな期待が寄せられています。ソ連崩壊後の1990年代は、共産体制の崩壊による混乱に見舞われ大きな苦難を経験しました。私が訪れたポーランド第2の町・ウッチは、一時は失業率が50%を超え、多くの市民がイギリスに移住して行ったとも聞きました。しかしその後、その混乱も収まり、今ではEUの補助金も大量に投入され、経済発展の雰囲気を感じることができ、国全体が活気に溢れています。日系進出企業もその発展に大きな期待をかけています。「ポーランドは、ヨーロッパ第6の大国である」と現地の方々は語ってくれました。なぜならば、人口がヨーロッパの中で第6位(ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、スペインに次ぐ)であることをその根拠としているからです。余談ですが、その人口は3800万人であり、後で述べますが、ヨーロッパの国々の人口は1番多いドイツでも8200万人程であり、日本に比べればはるかに少ないのです。しかし、欧州の中では人口が相対的に多いことが、ポーランドに対するより大きな期待に繋がっているのです。
そのポーランドでも少子化現象を示しており、今後人口減少が予想されているとのことでした。つまり、「少子化」「高齢化」「人口減少」といった日本と同じキーワードの国家でありながら、しかも日本の1/3以下の人口でありながら、ポーランドは新興国として活力を維持しているのです。日本が、極端な悲観論に陥ることなく、「活力ある成熟社会」を創り上げることは不可能ではなく、やり方次第では今後への対応は十分可能であると感じたのです。
かつて18世紀半ばに産業革命をなしえたイギリスは近代化のモデル国家となりました。そして世界がその後ろ姿を追いかけていき、近代化を目指した時代が続いてきました。その300年の流れが終焉し、今世紀半ばからは、「活力ある高齢社会」を目指す時代に入っていくのではないでしょうか。「発展」「拡大」「成長」の近代化の時代から「成熟」「均衡」「安定」の時代に移行していくのだろうと思います。この「新しい時代」のモデル国家に日本がなることができるかどうか。そのことが問われる今後30年であると思っています。日本は、歴史上初めて世界の「モデル国家」になるチャンスを得ようとしているのです。まさに、国家最大のピンチを最大のチャンスに変えていかねばならないと考えています。
平均寿命 世界一
何故日本は「高齢化・人口減少」の流れのトップランナーになったのかを考えてみたいと思います。それは、少子化の進展と平均寿命が伸びたことの結果です。ここでは、平均寿命が伸びたことを取り上げます。日本の平均寿命(2014年)は、男性80.50歳、女性86.83歳、男女合わせて84歳と世界一です。平均寿命が伸びるには、医療技術の進歩などなど多くの要因があろうかと思います。それを一言でいえば、「住みやすい国」ではないでしょうか。住みにくい国の平均寿命が高いとは考えにくいと思います。ということは、日本は世界で一番住みやすい国と考えてもいいのではないでしょうか。「安全」「清潔」「便利」などなど、いろいろ考えても日本は世界のトップクラスにあるのです。海外に行った方の多くは、日本がいかに素晴らしい国であるのかを実感されると聞いています。私も、短期ではありますが海外視察の度に常にそう感じています。夜の外出も心配なく出来ますし、街はいたって清潔に保たれています。「おもてなし」に代表される親切な人たちにいたる所で出会うことができます。風光明媚な景色やおいしい郷土料理を各地で楽しむことができ、全国いたる所に観光地が存在しています。多種多様な嗜好を満たす商品・サービスが街中に溢れていて、便利な日常生活を行うことができます。時速200㎞を超える新幹線ですら数分おきに、しかもほぼ定刻に運行されているように信頼性の高い社会システムがあります。そして長い伝統と革新性が同居する文化が日々生み出されています。
そんな素晴らしい国はありません。もっと自信を持って進んで行けばいいと確信しています。常に隣の庭は綺麗に見えるものです。もっと日本の素晴らしさを誇ってもいいと思っています。そして、これらの点は、「発展」「拡大」「成長」の時代よりも、「成熟」「均衡」「安定」の時代によりマッチする長所となりうると思っています。